二十四節気「芒種(ぼうしゅ)」とは?意味や由来、行事を解説

芒種(ぼうしゅ)とは?

芒種とは、二十四節気の1つで、梅雨が始まり、本格的な夏へ移行する時候を表す9番目の二十四節気です。

芒種の「芒」は「のぎ」と読み、麦や稲などのイネ科植物の穂先にある、針のような突起の形の毛のことを言います。この「芒」の植物の種を蒔く季節であることから、「芒種」と名づけられました。

芒種には他にも田植えや麦の刈り入れを行う目安として考えられてきました。

芒種の時期である6月に入ると雨の日が増え、いよいよ梅雨が本格化してきます。

カラッとした暑さだった気候が次第に湿度を帯び、高温多湿の蒸し暑さが増す頃。初夏の気配をしっかり感じられる時期である芒種は、夏の季語としても使われています。

2025年の芒種はいつ?

2025年の芒種は、2025年6月5日(木)です。

二十四節気(にじゅうしせっき)とは?

二十四節気(にじゅうしせっき)とは、紀元前の中国で太陽暦を使用していた時代に、季節を表すものとして太陽の動きに基づいて誕生した概念です。

1年を「春・夏・秋・冬」の4つの季節に分類し、さらにそれぞれの季節を6つに分け、合計24等分したものに名称をつけたものです。それゆえ、二十四節気と名付けられました。ちなみに、「節」は中国語で「区切り」の意味があります。

四季の始まりを表す「立春」「立夏」「立秋」「立冬」は二十四節気の「四立(しりゅう)」と呼ばれます。

また1年で最も日が短い「冬至」、1年で最も日が長い「夏至」、昼と夜の長さが同じ日を「春分」「秋分」と呼ばれ、この4つは「四至(しし)」と呼ばれます。

二十四節気は1年の変化の法則を定めたものとして、2016年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。

芒種の第二十五候、第二十六候、第二十七候とは?

二十四節には四季よりもより細やかに季節の移ろいを表す七十二候があります。

二十四節の1節をさらに約5日ごとに3等分し、1年を七十二に分けたもので、芒種には第二十五候、第二十六候、第二十七候があります。

第二十五候は、6月5日から6月9日頃で「螳螂生(かまきりしょうず)」時期と呼びます。字の通り、螳螂(かまきり)が卵から孵り生まれる時期を指します。

第二十六候は、6月10日から6月15日頃で「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」と呼び、蛍が舞う時期を指します。昔は暑さにやられて腐った草の根が蛍になると信じられていたため、このような名前がつけられたそうです。

第二十七候は、6月16日から6月20日頃で「梅子黄(うめのみきばむ)」時期と呼びます。字の通り、青々と実った梅が熟し、黄色く色づき始める頃合いを指します。

芒種に物事を始めると縁起が良いのはなぜ?

芒種は古来より種蒔きの目安でした。種を蒔いた植物はここからぐんぐんと成長して実をつけていくことにかけ、芒種は「物事を始めるのに縁起が良い時期」と言われるようになりました。

日本では昔から数え年で6歳になる年の6月6日に「稽古始め」を行うという習わしがあります。芒種は物事を始めるのに縁起が良いため、この日に稽古を始めると上達すると考えられていたのです。この習わしの由来は、室町時代に遡ります。

室町時代に能を大成した世阿弥は、自身の著書である『風姿花伝』に「この芸において、おほかた、七歳をもてはじめとす」と記しています。これは「稽古を始めるのは数え年7歳(現代の満年齢にして6歳)が良い」という意味です。

芒種の行事や風習とは?

芒種は、田植えや稲刈りのシーズンです。

今は品種改良によって時期が少しずれましたが、今でも各地で田の神様に豊作を祈願する祭事が行われています。

有名どころでいうと伊勢神宮の別宮・伊雑宮で行われる「磯辺の御神田」や、住吉大社で行われる「御田植神事」、下鴨神社の「御田植祭」などがあります。

また、芒種は蛍狩りのシーズンでもあります。

枕草子でも「夏は夜。月のころはさらなり。闇もなほ、ほたるの多くとびちがひたる」と蛍の記述がある通り、芒種には夏の風物詩である蛍の繁殖が最盛期を迎えます。今でも全国各地で蛍の鑑賞会などが行われています。

芒種の旬の食べ物とは?

芒種に旬を迎える食べ物はたくさんあります。

野菜でいうと、トマト、みょうが、いんげん豆、枝豆、きゅうり、おくら、大葉、ししとうがらし、しょうが、つるむらさきなどの夏野菜が美味しく育つ時期です。特にトマトは高温多湿に弱い野菜なので、夏の本番前である芒種の時期が一番美味しいと言われています。

果物でいうと、サクランボやあんず、びわなどが挙げられます。も熟して色づく時期です。

魚でいうと、キスやイカ、シマアジ、あゆ、いわし、かわはぎ、かんぱち、とびうお、すずき、くるまえび、かじきまぐろなどが旬を迎えます。

芒種の旬の花や植物とは?

芒種に見頃を迎える植物といえば、やはり紫陽花です。紫陽花は梅雨の時期の代名詞ともいえる代表的な花です。

古くは万葉集にも歌われ、鬱々とした曇り空の景色を華やかに彩る姿が親しまれてきました。現在では品種改良が進み、様々な種類の紫陽花が栽培されています。

また、桔梗も芒種の時期に盛りを迎えます。

桔梗は万葉集で秋の七草の1つに取り上げられるほど古くから人々に親しまれてきた花です。芒種に花を咲かせ、秋ごろまで見頃が続きます。

桔梗は青紫色の星形の花を咲かせることから五芒星のデザインの基となり、安倍晴明所縁の晴明神社の花とされている他、かの戦国武将・明智光秀の家紋にもなっています。

芒種の過ごし方とは?

芒種からは、いよいよ梅雨が本格化します。

梅雨を快適に過ごせるよう、雨の日を楽しく過ごせるものをたくさん見つけておくと良いでしょう。

たとえば、華やかに雨景色を彩る紫陽花を見に散策に出かけたり、1年のうち短い期間にしか見られない蛍を鑑賞しに行ったりするのもおすすめです。

ただし、蛍はきれいな環境にしか生息しないデリケートな昆虫です。年々蛍が観測できる場所も、生息数も減ってきていますので、蛍狩りに行く際は自然保護に努めしょう。

また、一気に蒸し暑くなってきますので、早くも夏バテにならないよう体調管理に努めることも大切です。

芒種に旬を迎える夏野菜には体を冷やしてくれる作用があるので、気分をシャキッとさせたい時におすすめです。

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