二十四節気「啓蟄(けいちつ)」とは?意味や由来、行事を解説

啓蟄(けいちつ)とは?

啓蟄とは、二十四節気の1つで、春のはじまりを表す立春、そして雪解けの時期を表す雨水の次に来る、3番目の二十四節気です。

啓蟄とは、「開く・開放」を意味する「啓」と、「虫の冬ごもり」を意味する「蟄」を合わせた言葉で、冬の間に籠もっていた虫たちが春になって土から出てくる様子を意味しています。

啓蟄は春の季語としても人気で、早春の出来事を表す俳句に使われています。

2025年の啓蟄はいつ?

2025年の啓蟄は、2025年3月5日(水)です。

二十四節気(にじゅうしせっき)とは?

二十四節気(にじゅうしせっき)とは、紀元前の中国で太陽暦を使用していた時代に、季節を表すものとして太陽の動きに基づいて誕生した概念です。

1年を「春・夏・秋・冬」の4つの季節に分類し、さらにそれぞれの季節を6つに分け、合計24等分したものに名称をつけたものです。それゆえ、二十四節気と名付けられました。ちなみに、「節」は中国語で「区切り」の意味があります。

四季の始まりを表す「立春」「立夏」「立秋」「立冬」は二十四節気の「四立(しりゅう)」と呼ばれます。

また1年で最も日が短い「冬至」、1年で最も日が長い「夏至」、昼と夜の長さが同じ日を「春分」「秋分」と呼ばれ、この4つは「四至(しし)」と呼ばれます。

二十四節気は1年の変化の法則を定めたものとして、2016年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。

啓蟄の第七候、第八候、第九候とは?

二十四節には四季よりもより細やかに季節の移ろいを表す七十二候があります。

二十四節の1節をさらに約5日ごとに3等分し、1年を七十二に分けたもので、啓蟄には第七候、第八候、第九候があります。

第七候は、3月5日から3月9日頃で「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」と呼びます。土の中で冬ごもりをしていた虫たちなどの生き物が、春の訪れを感じ、姿を現す様子を表しています。

第八候は3月10日から3月14日頃で「桃始笑(ももはじめてわらう)」と呼びます。「笑う=花が咲く」の意味で、桃の蕾がほころび花が咲き始める様子を表しています。

第九候は3月15日から3月19日頃で「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」と呼びます。大根などを食べる青虫が孵化し、蝶となって飛び回る様子を表しています。

啓蟄の季節で迎える蛙の目覚め

啓蟄は土の中で冬ごもりしていた虫たちが春の訪れとともに地上へ這い出てくる時期を指します。

この啓蟄が表す冬眠の「虫」とは昆虫だけでなく、蛙や蛇、トカゲなどの両性類や、ダンゴムシやワラジムシ、ムカデなどの甲殻類も指します。

蛙といえば夏前に繁殖しておたまじゃくしを産み、梅雨の時期あたりに鳴き声がよく聞こえるものですが、昔ながらの里山では2月下旬頃にはすでに親蛙が目覚め、水辺に産卵を行う様子も見られるそうです。

蛙を含め、虫たちの冬眠の目覚めは気温に左右されることが多く、一時暖かくなるとまた寒さをぶり返しても活動を再開すると言われています。

啓蟄の行事や風習とは?

啓蟄に行われる有名な風習の1つ「菰はずし」は春の風物詩となっています。

冬の間に松の木に群がってくる害虫を駆除する菰はずしは、啓蟄に行う地域が多く、藁でできた「菰」を巻いて、そこに虫を集め、虫の動きが活発になり始める啓蟄に「菰」と一緒に虫を除去する方法です。

他には立春を過ぎてから初めて鳴る雷(初雷)が啓蟄に頃によくあるため、「虫出しの雷」と呼ばれています。昔の人は雷の音に驚いた虫たちが土の中から顔を出すと考えていたようです。

また啓蟄に行われる行事としては、奈良時代から続く東大寺の「お水取り」があります。

穢れを祓い、国家の平穏を祈祷する法会の終盤に行われる行事で、3月12日の深夜から翌日未明にかけて、お供えする井戸を汲み上げます。春の訪れを示す行事として人気です。

啓蟄の旬の食べ物とは?

啓蟄の旬の食べ物は、山の幸ですと、タケノコや新玉ねぎ、春キャベツの他、独特なほろ苦さや香りが特徴的な山菜(よもぎ、フキノトウ、菜の花、タラの芽、あさつき、ニラ)などが挙げられます。

海の幸ですと、サヨリやニシン、そして、ひな祭りのお吸い物に使われるハマグリなどがあります。「魚」に「春」と書く「鰆(さわら)」も、文字通り春に旬を迎える魚です。

ちなみに、中国では啓蟄に「虫が作物から離れる」意味で梨を食べる風習があります。

啓蟄の旬の花や植物とは?

啓蟄に咲く旬の花といえば、です。桃の花はひな祭りのひな壇に飾られる花で、色や形から桜と間違われることが多いですが、花弁の先が尖っているところで見分けられます。

また、啓蟄の時期に黄色い花を咲かせる菜の花も見頃を迎えます。

菜の花というと河川敷などに一面黄色い小花を咲かせる菜の花と呼ばれる花のみを思い浮かべる人が多いと思いますが、菜の花はアブラナ科の植物の総称のため、ブロッコリーやキャベツ、カリフラワーなどの野菜の花も該当します。

啓蟄の過ごし方とは?

春に旬を迎えるタラの芽やフキノトウなどの野菜を食べると不安やイライラを和らげ、リラックスできる効果があると言われています。

中国では、まさに冬眠から目覚める虫と同じく啓蟄の頃に穂先が土から顔を出すタケノコを食す風習があります。タケノコを食べることで春の味覚を知ると言われていました。

四季のリズムで考えると啓蟄は季節の変わり目で寒暖差が起きやすいことと、新年度を迎える直前であることから心身ともに調子が乱れやすい時期となるので、健康な食生活と十分な休息を取る時期と考えると良いでしょう。

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